咖啡场景
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投稿者
小坂章子
since
2015-07-25
  • 珈琲がそこにあるだけで、
  • いつもの日常が豊かにふくらみ始めていく。
  • そんな珈琲まわりの徒然話を日本よりお届けします。
  • ブルーボトルコーヒーへ行ってきた(2)

    長い行列を乗り越え、ついに
    BB(ブルーボトルの勝手な略称)に
    入店を許された私。
    なかに入ると、おお、吹き抜けの天井から光が!
    雑誌にでてくる外国のカフェそのもの。
    どうかすると、日本人スタッフの顔も
    外国の人に見えてくる。
    洒落ちょるな...。
    すべてが明るく清潔で感じよく、部屋の隅々まで
    センスにあふれている。
    タバコのヤニと太陽光にさらされて変色した
    壁紙がめずらしくはない喫茶店の暗がりに
    馴れた私の目には、ちょっと眩しすぎるくらい。

    けれど、ここで気後れするわけにはいかない。
    せっかくの初BBだもの、楽しみましょう。
    左手にはテーブル席があり、数人が寛ぎ中。
    190坪に対して、24席。
    焙煎工場、カッピング、トレーニングセンター、
    キッチン、事務所などを完備した空間は、
    もともと喫茶が第一目的ではなく、
    コーヒー工場の中で雰囲気を味わいつつ、
    コーヒーを気軽に日常のものとして楽しもうという
    主旨のもとに設計されているのが伝わってくる。
    正面には、オークランド本店と同じ焙煎機
    (LORING社?ローリングスマートロースト)が鎮座し、
    右手には、ドリップ器具やエスプレッソマシンなどが
    置かれたカウンターと、カード決済のみ有効の
    豆の販売スペースが設けられている。
    (レジで支払う場合は、現金OK)
    エスプレッソマシン「スピリット」は、
    「ラ?マルゾッコ」の設備が内臓されているらしい。
    「焙煎から48時間の豆しか使用しない」というのも、
    BBを語る上では欠かせない特記事項である。

    中央に進むと、背の高い大テーブルを囲む
    スタンド式の空間があり、念願の一杯にありついた
    人々がワッフルをかじりつつ、余裕の笑みをうかべている。
    こちらの集団は、長い長い行列の旅を乗り越え、
    ようやく「聖地」へ辿り着いたため、
    できる限り、粘りに粘って、石にかじりついてでも
    BBを満喫してやるぜという強い意志をただよわせている。
    それはまるで「ノアの箱舟」に乗り合わせた人々にも
    共通する一体感にも似ているような...。
    箱舟なんて、実際、見たことないんですけどね。

    さて私が属する行列組は、真正面のレジに向かう
    最後の直線コースに差し掛かっていた。
    が、店に入ってしまえばこっちのもの。
    BB特有の都会的なざわめきに包まれて
    思う存分きょろきょろできるので、ちっとも退屈しない。
    誰もが携帯やカメラを取り出し、記録にいそしんでいる。
    BBで働く人、特にコーヒーを作る人達は、
    芸能人なみに人々の視線にさらされ、あらゆる場面を
    撮影される(時には動画で)わけである。
    それを楽しむくらいのハートの強さがないと、
    生き残ってはいけないですね。

    と、炎天下の行列時代からその存在を
    肩越しに意識してきた母親世代の女性A子さんが、
    ちょっと困惑した顔つきで私に話し掛けてきた。
    「あのお、コーヒーはどんなのがあるんですかね。
    何を頼んだらいいのかわからなくて...。
    私、今日、はじめて来たものだから」
    たしかに壁のメニューを見ると、コーヒーは
    エスプレッソとドリップから選ぶようになっていて、
    さらに種類がわかれる。
    私は、いつもどんなコーヒーを飲まれますか?
    甘いのが好きですか、それともブラックを
    ストレートで?など喫茶店主を気取った末に、
    ペーパードリップのブレンド(450円)をおすすめした。
    「私も初めて来たんですよ、福岡から」
    「あらっ、私は名古屋なの。東京に住んでる
    娘夫婦に頼んで連れて来てもらったんですよ!」
    A子さんが、ふと私の首から下げたカメラに
    目をやったので、「喫茶店の取材をしているんです」と
    話すと、「わあ、そうなんですかぁ!」と
    ますます盛り上がり、A子さんは娘とそのご主人に
    「ねえ、こちら喫茶店を取材している
    本職の方なんだって!」と報告。
    「じゃ、BBには偵察に来たんじゃないですか?
     喫茶店とはライバル関係じゃないですか」
    「いやぁ、ライバルっていうか、コーヒー仲間ですよ。
    私もこういう仕事をしているので、一度は
    行っておこうと思いまして」
    彼らとそんな話をしながら待っていたら、
    しばらくしてA子さんがすすすっと私のそばに
    近寄り、耳もとに口を近付け、一言。

    「実は、私ね???」
    え、何何、ヨーヨーがどうしたって? 
    「だからぁ、私、ヨン様のファンなんですよぉ!」
    ヨン様っていったら、あの、
    “春ソナ”のペ?ヨンジュン氏のこと?
    「そうっ、ヨン様! フフッ、それなもんだから
    ヨン様が行ったというコーヒー店を廻ってるんですよ、
    全国あちこち追っかけて、フフフッ」
    ははあ、どおりで??。
    A子さんに名古屋のおすすめ喫茶店を聞いたとき、
    目が泳いでいたわけのは、そういうわけか。
    「家でもね、ヨン様がやってるように、
    手動のミルでごりごり豆を挽いて、一杯ずつ
    ドリップして飲んでるんですヨ!フフッ」
    え、ヨン様もここに来たんですか。
    さあ、ここに来たかはわかりませんけど
    アメリカの本店には行ったんじゃないのかなぁ。
    文脈に「ヨン様」が登場するたびに、
    少女のような恥じらいをうかべるA子さん。
    キュートでよろしい。
    それにしてもコーヒー好きになる動機も
    様々なんだ、面白いなあ。
    韓流スターブームの元祖火付け役?ヨン様が
    このような形で日本のコーヒーファンの拡大に
    貢献してくださっているとは、
    ありがたいことではないですか。

    さて私のすぐ前の人がレジで注文をし始めた。
    右側のドリップコーナーでは、
    できあがった一杯を手渡すときに、
    客の名前を呼んでくれる。
    へえー、これはすごい、どうやって名前がわかるんだろう。
    と、背後からA子さんが「私もこれと同じの使ってるの」と
    レジ脇のショーケースに並んでいたハリオのドリッパー
    V60を指差し、得意気な表情をうかべている。
    や、やるな、A子さん。

    ようやく私の番がまわってきた。
    ドリップと、ドリップの豆を100グラムと、あ、それから
    ワッフルもお願いします。
    コーヒー一杯よりワッフルの方が50円高いというのが
    気になったけれども、それだけ原価がかかっているのだろう。
    レジでお金を支払う際、さりげなく名前を聞かれた。
    「あ、こ、小坂です」
    「オサカさんですね」
    「いえ、あの、コサカです」
    (なーるほど、ここでか!)と感心しながら
    レシートの控えを受け取り、目を落とすと
    そこには「Hosaka」というローマ字が。
    HとK、たった一文字の違いを前に、
    私はレシートを手に未練がましくレジに目をやったが、
    ちょうどA子さんが頬を蒸気させ、
    注文をはじめたところであったので、
    モ?マンタイ、ノープロブレム、ケンチャナヨと
    言い聞かせ、BBにいる間は「保坂」を名のることにした。

    ドリップコーナーでは、笑顔がステキな女性が
    お煎茶をいれるような感じでポットの蓋に手をおき、
    くるりくるりと回すようにしてドリップしている。
    一応、写真撮影の了解を得ると、にっこりOK。
    ぷっくりと膨らむドリッパーの中のコーヒーが、
    芳しい香りを放つ。
    抽出する人は、今、いれているのは誰々さんの一杯と
    確認しながら丁寧にいれているのだ。
    初対面には違いないけれど、
    名前で呼び合うこのサービスは、
    日本の喫茶文化の良いところが生きていて好感を持った。
    しかも、抽出された液体がたまるサーバーの下には、
    タイマーと重量計を備えた装置がつけられており、
    ドリップの時間と量をきっちりと確認できるなど、
    シンプルな設計の中にも工夫がたくさん施されている。
    このあたりは、さすがである。

    3人の名前が呼ばれたあと、ついに女性が
    例のHosakaと書かれたレシートを手元に引き寄せ、
    抽出をはじめた。
    あ、今、私のコーヒーを作ってくれているんだなあ。
    ちょっとした幸福感に包まれる保坂であった。
    「Hosakaさん!お待たせしました!」
    はいはいはいはい、私が保坂です、
    保坂が、今、受け取りに行きますよぉ。
    紙のカップなみなみに入ったコーヒーを手に、
    A子さんの姿を探すと、彼女は彼女でコーヒー豆やら
    道具やら、いろんなものをゲットした模様。
    互いに「やったね」という笑みを交わしていると、
    ペーパーフィルターにくるまれた
    「Hosaka」特製ワッフルが焼き上がった。
    コーヒーより先に、焼きたてアツアツの
    ワッフルにかぶりつく。
    甘さ控えめでカリッふわっな食感は、
    保坂も納得の一品であった。(しつこい?))

    コーヒーとワッフルを手にした私は、
    戦友A子さんとその家族に別れを告げるやいやな、
    外へ飛び出した。
    炎天下の行列時代、コーヒー片手にさっと出てくる
    人々を見るにつけスマートだなあと感じていましたので、
    私も長居は無用とばかりに実行。
    行列はさっきよりも長くなり、日射しも強くなってきた。
    グッドラック! 
    戦友たちに別れを告げた私は、
    ついに心落ち着け、コーヒーを一口すすってみた。
    中深いりのブレンド名は、エチオピアやインドネシア
    などを含む「ベラ?ドノヴァン」。
    意味はすみません、よくわからないが、
    サードウェーブ系としては深い方に入るかな。
    味を何と表現するか、難しいけれども
    若いフレッシュな印象のコーヒーである。
    まろやかな深いりが好きな自分としては、
    少々物足りない。
    が、飲みやすい味わいではあるので、
    原稿仕事の傍ら、マグカップになみなみ注いで
    グッと飲む、そういうシーンには良いだろう。

    BB自体が旬の観光スポットなので、
    仕方のないところもあるけれども、
    ゆっくりとお茶を楽しむ雰囲気ではない。
    あの付近で暮らす人からすれば、
    何度も足を運んで、自分のお気に入りの場所に
    なるということもありうるのかもしれないが、
    今の時点では話題の「観光スポット」。
    5年後、10年後、これからどう街にとけこんでいくのか、
    興味がありますね。
    ブルーボトルマークが入った持ち帰りの袋、
    持ち歩くのは恥ずかしい気がしたので、たたんで鞄の中へ。
    田舎者ほど、おのぼりさんである自分を恥じ、
    隠したがる傾向にある、そんな自分とあらためて
    向き合ったBB訪問記であった。
    それではまた来月。
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